「田中さん、もうどうしたらええか分からへんのです…」
昨日も、電話の向こうで若い男性が震える声でそう言うてきましたわ。
話を聞けば、SNSで見つけた「給与ファクタリング」なるものに手を出してしもた、と。
手取り25万円の給料のうち、10万円を前借りするのに手数料を3万円も取られ、返済のためにまた別の業者から借りる…典型的な負のスパイラルや。
一見すると、給料を先に受け取れるだけの便利なサービスに見えるかもしれへん。
「借金と違う」「ブラックでもOK」なんて甘い言葉が並んでたら、ついフラっといってしまう気持ちも分からんでもない。
でもな、ハッキリ言います。
個人向けの給与ファクタリングは、ヤミ金と何ら変わらん、ただの違法な高利貸しやで。
この記事では、業界に20年以上おるワシ、田中誠が、その危険な実態と絶対に手を出したらアカン理由を、誰にでも分かるように徹底的に解説したる。
この記事を読み終える頃には、なんでワシがここまで強く警告するんか、その意味が痛いほど分かるはずや。
給与ファクタリングの基本構造
どういう仕組みになっているのか
まず、この「給与ファクタリング」がどういうもんか、簡単に説明しときますわ。
仕組みは至ってシンプル。
- 申込: あなたが業者に「来月もらう給料の一部を先にください」と申し込む。
- 買取: 業者は、あなたの「給料を受け取る権利(給与債権)」を買い取る形で、手数料を引いた現金をあなたに渡す。
- 返済: 給料日になったら、あなたは受け取った給料の中から、業者に満額(借りた額+手数料)を返す。
例えば、給料日に20万円もらえる権利を業者に売って、手数料5万円を引かれた15万円を即日で受け取る、みたいな感じやな。
そして給料日には、業者に20万円をきっちり支払う。
これが基本的な流れや。
法律上の立ち位置は?ローンとの違い
ここが一番大事なポイントやから、よう聞いといてな。
業者は「これは金融、つまり貸し借りやない。債権の売買契約なんや」と言い張ります。
せやから、貸金業法で定められた金利の上限(年利20%)なんて関係ない、というのが彼らの理屈やった。
せやけど、そんな言い訳はもう通用せえへん。
最高裁判所が2021年に「給与ファクタリングは貸金業にあたる」とはっきり判断を下したんや。
この判断によって、給与ファクタリングをやる業者は、国や都道府県に「貸金業」として登録せなアカンことになった。
登録もせんと営業してる業者は、全部「ヤミ金」と同じ、ただの違法業者やで。
要するに、名前は「ファクタリング」でも、その実態はただの「給料を担保にした借金」やと、国が最終結論を出したっちゅうことや。
なぜここ数年で急増したのか
ほな、なんでこんな危険なもんがここ数年で一気に広がったんか。
理由は主に3つありますわ。
- スマートフォンの普及: 申し込みから入金まで、全部スマホで完結する手軽さ。
- SNSでの宣伝: 「#即日現金化」「#ブラックOK」みたいなハッシュタグで、お金に困ってる人をピンポイントで狙い撃ち。
- 法規制のグレーゾーン: さっき言うたように、最高裁の判断が出るまでは「貸金業やない」と言い張って、法規制をすり抜けてたんや。
この手軽さと巧妙な宣伝文句に、多くの人が「これなら大丈夫かも」と錯覚してしもた。
これが、被害が急増した大きな原因やな。
個人向け給与ファクタリングが危険な理由
金利に見えるけど金利じゃない「手数料」の実態
業者が使う「手数料」という言葉に絶対に騙されたらアカン。
これは実質、利息そのものや。しかも、とんでもない高金利やで。
ちょっと計算してみましょか。
借入額(手取り) | 支払う手数料 | 返済までの期間 | 年利に換算すると… |
---|---|---|---|
5万円 | 2万円 | 1ヶ月 | 約480% |
10万円 | 3万円 | 1ヶ月 | 約360% |
20万円 | 5万円 | 1ヶ月 | 約300% |
どうや?
法律で定められた上限金利は、年20%やで。
年利300%とか400%とか、もうメチャクチャな数字やろ。
これを「手数料」という言葉でごまかしてるだけ。
ほんま、悪質極まりないわ。
「借金ではない」と言い張る業者のロジック
今でも「うちは貸金やない」と言い張る業者がおるかもしれん。
そいつらは100%クロ、つまりヤミ金や。
最高裁の判例が出た以上、「借金ではない」という主張は完全に破綻しとる。
もしそんなことを言う業者に出会ったら、その瞬間に電話を切って、すぐに関係を断ち切ること。
まともな議論が通じる相手やないで。
闇金と見分けがつかないケースもある
貸金業登録をしていない給与ファクタリング業者は、法律上「ヤミ金融」そのものや。
つまり、やってることがヤミ金と全く同じっちゅうこと。
- 法外な金利(手数料)を取る
- 返済が遅れると、職場や家族に脅迫まがいの電話をかける
- 個人情報を他の悪質業者に売り飛ばす
実際に、給与ファクタリングを利用したせいで、職場にバレて居づらくなったり、家族関係が壊れたりしたケースは山ほどある。
「給料の前借り」なんて軽い気持ちで手を出したら、人生そのものを壊されかねへんのや。
利用者の多くが陥る“負のスパイラル”
これが一番怖いところや。
一度手を出したら、まず抜け出されへん。
例えば、手取り20万円の人が、給料日前に5万円を借りて手数料2万円を払うとする。
次の給料日、手元に残るのは13万円(20万円 – 5万円 – 2万円)だけや。
生活費が足りんようになって、また次の給料日前に別の業者から借りてしまう…。
こうして、雪だるま式に借金が膨らんでいく。
気づいたときには、複数の業者から借りては返すだけの自転車操業状態。
これが、ワシが「負のスパイラル」と呼んでるもんの正体や。
実際にあった事例とその末路
ワシが実際に相談を受けた、胸が痛む話をいくつか紹介するわ。
プライバシーに配慮して少し内容は変えとるけど、全部ほんまにあった話やで。
ケース1:建設現場の若手作業員が手を出した結果
24歳のA君。
現場仕事で、給料の支払いが少し遅れることがあったらしい。
同僚との付き合いや趣味のパチンコで金が足りんようになって、スマホ広告で見た給与ファクタリングに手を出した。
最初は3万円やった。
それが5万、10万と膨らんで、気づけば3社から合計30万円。
毎月の返済額は給料の半分を超えとった。
「もう無理です。会社にも鬼のように電話がかかってきて…親にもバレてしまいました。俺、どうしたらいいんですか…」
彼の声は、完全に自信を失っとった。
ケース2:シングルマザーが生活費目的で利用
Bさんは、小学生の子供を二人育てるシングルマザーやった。
パートの給料だけではどうしても足りん月があって、「審査なし」の言葉に惹かれてしもた。
子供の給食費を払うための、たった2万円やった。
でも、一度使うと翌月はもっと苦しくなる。
返済のために別の業者から借り、手数料はどんどん嵩んでいった。
最終的には、夜の仕事まで始めんと回らんようになってしもてたわ。
ケース3:副業で資金ショートした会社員
Cさんは、本業の傍ら、ネット物販の副業をやっとった。
仕入れ資金が急に必要になって、銀行の融資も間に合わんからと安易に利用したのが運の尽きや。
「事業資金」やなく「給与」を担保にしたもんやから、返済が滞ると本業の会社に連絡がいった。
結果、副業がバレて会社での立場が悪くなり、結局退職に追い込まれてしもた。
共通する「情報格差」と「焦り」の心理
この3つのケースに共通してるんは何やと思う?
それは「正しい情報を知らんかった」という情報格差と、「今すぐ何とかせな」という焦りの心理や。
悪質業者は、この2つの弱みにつけ込むプロや。
せやからこそ、ワシらは正しい知識を身につけて、冷静に判断する力を養わなアカンねん。
なぜ個人向けに広がってしまったのか
SNSやYouTubeでの過剰な宣伝
「マジで秒速で振り込まれたw」「これでピンチ乗り切れた!」
Twitter(現X)やYouTubeで、こんな投稿や動画を見たことないか?
あれの多くは、業者が金で雇ったサクラやアフィリエイターによる宣伝や。
いかにも「みんな使ってる」「安全なサービス」みたいに見せかけて、安心させてから罠にハメる。
ほんまに巧妙で悪質やで。
「審査なし・即日現金化」という甘いワード
お金に困ってるときほど、この言葉は魅力的に見える。
銀行や消費者金融で断られた人にとっては、最後の蜘蛛の糸に思えるかもしれん。
でも、よう考えてみてほしい。
まともな金融機関がなんで審査をするんか。
それは「この人はちゃんと返せるか?」を見極めるためや。
審査をせんっちゅうことは、「返せんようになっても、どんな手を使っても取り立てたる」という宣言と同じやと心得ときや。
法規制のグレーゾーンを突いた業者の巧妙さ
さっきも言うたけど、最高裁の判断が下るまでは、法的な位置づけが曖昧やった。
業者はそのグレーゾーンを最大限に利用して、「これは合法サービスや」と大々的に宣伝してたんや。
その頃のイメージがまだ残ってて、「給与ファクタリング=便利なサービス」と勘違いしてる人が今でもおる。
でも、もう一度言うで。今の給与ファクタリングは、明確に「貸金」であり、無登録業者は「ヤミ金」なんや。
見極めポイントと自衛策
こういう業者は危ない!チェックリスト
万が一、接触してしもたときのために、ヤバい業者の見分け方を教えとく。
一つでも当てはまったら、即アウトや。
- 貸金業登録番号の記載がない: ホームページの会社概要などを必ずチェック。番号が見当たらん業者は100%違法。
- 年利の表示がない: 「手数料」としか書かず、年利に換算した利率を隠している。
- 「借金じゃない」と強調する: 法律を無視した悪質な主張。
- 契約書を渡さない: 書面での契約を嫌がるのは、証拠を残したくないから。
- 個人の携帯電話でやり取りする: 会社の固定電話を使わず、担当者の携帯だけで完結させようとする。
正当な資金調達の選択肢(例:社内貸付、福利厚生ローンなど)
もし本当にお金に困ったら、違法な業者に頼る前に、まず正当な手段を検討してほしい。
- 会社の制度を確認する: 会社によっては、給料の前借り制度や、従業員向けの貸付制度(福利厚生ローン)がある。まずは総務や人事に相談してみるのが一番安全や。
- 公的な支援制度を利用する: お住まいの市区町村の社会福祉協議会では、「生活福祉資金貸付制度」というものがある。無利子または低金利で、生活再建のためのお金を借りられる可能性がある。
- カードローンや消費者金融: もちろんこれも借金やけど、少なくとも法律の範囲内で運営されとる。ヤミ金に手を出すくらいなら、国に登録された正規の貸金業者を頼るべきや。
「生活資金が足りないとき」に相談すべき相手
一人で抱え込んだらアカン。
困ったときは、絶対に誰かに相談すること。
- 金融庁 金融サービス利用者相談室: 金融トラブル全般の相談に乗ってくれる。
- 警察の相談専用電話「#9110」: 脅迫的な取り立てなど、身の危険を感じたらすぐに電話。
- 日本貸金業協会: 登録業者の情報確認や、多重債務の相談ができる。
- 法テラスや弁護士・司法書士: 借金問題の専門家。具体的な解決策を示してくれる。
金の問題は、プライドが邪魔してなかなか人に言えんもんや。
でも、そのプライドが悪質業者の思うツボなんやで。
まとめ
長々と話してきたけど、ワシが一番言いたいことはシンプルや。
- 給与ファクタリングの本質は「個人向け高利ビジネス」であり、その多くは違法なヤミ金である。
- 「手数料」という言葉は、法律で定められた上限金利をはるかに超える暴利をごまかすための嘘。
- 一度手を出せば、抜け出すのが極めて困難な「負のスパイラル」に陥る危険性が非常に高い。
- 「審査なし」「即日現金化」といった甘い言葉の裏には、人生を破壊するほどの大きなリスクが隠れている。
騙されへんために大事なことは、たった3つ。
「焦らない・調べる・相談する」
これだけは、絶対に忘れんといてほしい。
お金に困ることは、誰にでもある。
恥ずかしいことやない。
せやけど、その弱みにつけ込んでくる奴らを、ワシは絶対に許せん。
この記事が、一人でも多くの人を悪質な罠から救うきっかけになることを、心から願っとる。
困ったことがあったら、ほんまに一人で悩まんと、まずは誰かに声をかけてや。
今日も最後まで読んでくれて、おおきに。